（楠本晃朗先輩からバトンを受けました。） １９９９年６月，永年勤務した東洋ゴム工業㈱をリタイアした後，縁あって大阪地方裁判所の調停委員を８年，その傍ら知人と二人で立ち上げたコンサルティング会社の経営に１０年携わりました。多くの人々の友誼に支えられ，仕事生活併せて５０年余に及ぶ歳月を無事やりおおせたことは誠に有り難き幸せというほかありません。 しかし７５歳を越えて老いを感じるに及び，心中ただならぬ波立ちを覚えます。人生の最終章をどう締めくくるかという根本テーマを未解決のまま放置して来たからです。自問自答の末，世間との習慣的なつき合いを放棄し，得られた閑暇において自由を存分に楽しむ生き方に転換するとの結論に達しました。明日知れぬ身の上のこと，この楽しみは「しばらく」の間で終わることも覚悟しながら，残された一瞬一瞬の時刻を精一杯楽しんで過ごそうと決心した次第です。 何から始めるか。まずは意志をもって閑暇を見つけ，読書三昧で過ごすことにします。幸いわが本棚には，いつかは読もうと東洋ゴム時代に毎月の配本で購入した漱石全集１６巻と子規全集２５巻が並んでいます。憧れの漱石と子規の世界に入り込めば，必ずや新しい発見に出会うことでしょう。その発見をささやかな執筆活動にも生かしつつ晩節を全うすることができれば，これに如く幸せはないと夢見ているところです。
（次は野村隆一さんにバトンをリレーします。）
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