富士山に登って見たいな、そやな、そうしよか、あゝ、登って
よかった。ハワイへ行って見ようか、よし、行こう、あゝ、来て
よかったなあ。
　何処へ行くのも一緒、何をするのも一緒、後日、思い出を語り
合う内容も全く一緒で、よく笑い合った。
　結婚以来、六十有余年、辛いことも、苦しい時期もあったけど、
何でも二人でやって来た。色んなところへ行った。日本最南端の
波照間島を訪れ、最南端の碑を囲んだ写真が残っている。私が
生まれた九州霧島山麓から、阿蘇を通って北上する九州の尾根、
やまなみハイウェーの壮大な風景、思い出しては、妻と二人で
感動したものだ。
　今、それ等の写真を次々に取り出しては、つい先日亡くなった
妻の写真に向けて、おい見ろよ、なつかしいだろ、もう一度行き
たいなあと語りかける。返事を待つ瞳に涙が溢れ、視野がぼやけて
しまった。